2026年8月3日

少額免税枠が世界で一斉に閉じている。直送モデルの前提が変わる

越境EC

「少額なら関税を取らない」という枠が、越境ECの直送モデルを支えてきた。2026年に入って、その前提が各国で同時に崩れている。 EUとタイは廃止済み、インドネシアとインドは実質的に枠がない。ベトナムは引き下げの案が意見公募中だ。並べると、方向は同じである。

直送の競争力は、安さより「通関を簡素に済ませられること」にあった。 枠が閉じると、品目分類・納税者の登録・申告データの整合性が常に問われる。事務コストと、間違えたときのリスクが同時に上がる。今日やることは、仕向国を棚卸しし、当たる国から着地コストを計算し直すことだ。

結論

  1. EUは2026年7月1日に150ユーロ枠を廃止し、HS6ごとに3ユーロの暫定定額関税がかかる。
  2. まず仕向国を「閉じた国」「案の国」「枠がほぼ無い国」に振り分け、年間の出荷件数を出す。
  3. ベトナムの10万ドンは政令案で未成立。基準値は現行の100万ドンに固定し、案は別列で持つ。

まずやること

  1. 仕向国を「閉じた国」「案の国」「枠がほぼ無い国」に振り分け、年間の出荷件数を出す
  2. ベトナムは100万ドン(現行)と10万ドン(案)の両方で着地コストを試算する
  3. HS6(関税上の品目分類の6桁コード)ごとに1件あたりの追加コストを積む
  4. 直送と現地倉庫一括の2案を、同じ物量・同じ期間で並べる
150ユーロEUが2026年7月1日に廃止した免税枠
3ユーロEUがHS6の品目ごとに課す暫定定額関税
1500バーツタイが2026年1月1日に撤廃した免税枠
100万ドン→10万ドンベトナムの現行と、意見公募中の案
2026年9月時点の整理。ベトナムは案の段階で、まだ法令化されていない。

どこが閉じて、どこが残っているか

国・地域ごとに並べる。

国・地域元の状態変わる点実務での対応
EU150ユーロ以下は関税免除2026年7月1日に廃止。HS6の品目ごとに3ユーロの暫定定額関税。2028年7月1日に通常関税へ移行予定荷物ごとに分類数を数える
タイ1500バーツ以下の免税枠2026年1月1日に撤廃済み送り状と価額を突き合わせる
ベトナム郵便・速達は100万ドン(約38ドル)まで免税10万ドン(約3.8ドル)への引き下げを含む政令案を意見公募中。未成立現行と案の両方で試算する
インドネシア3ドル以下のみ免税変化なし(枠はほぼ無い)少額でも関税がかかる前提で原価に入れる
インドECで海外から直接買った商品に免除枠なし変化なし直送の前提が成立しない国として扱う

「閉じた国」「案の国」「そもそも枠がほぼ無い国」の3段階に分かれる。 EUとタイは施行済みで、もう戻らない。ベトナムは成立するかも時期も決まっていない。インドネシアとインドは前提が違う。施行済みは「上がった後の設計」、案は「上がる前の備え」、枠が無い国は「最初から別の入り方」だ。3段階を混ぜると、順番を誤る。

増えるのは税額ではなく、通関の手間

枠が閉じたと聞くと、まず税額を計算したくなる。だが実際に重いのは、毎回の通関で判断と確認が要る仕事が増えることだ。直送は、通関を簡素に済ませられること自体が競争力だった。

確認する項目中身見落としやすい点
品目分類(HS6)どの商品を、どの6桁の分類で通すか似た商品を別々の分類で通すと、1件あたりの額が読めない
納税者の登録誰が輸入者として申告するか主体が決まっていないと、止まったときに動けない
申告データの整合性送り状の品名・数量・価額取引価額と送り状の額がずれると、修正のやり直しになる

3つは連動する。 分類が決まらないと納税者の整理もできず、納税者が決まらないと申告データの責任者も決まらない。最初に固めるのは分類だ。

ベトナムは「案」だ。価格表に書く前に確かめる

ベトナムは数字だけが先に流通している。10万ドンという数字は財務省の政令案で、成立していない。 商用の配送情報サイトでは現行の100万ドンのまま掲載し続けているものもあり、市場の情報は割れている。

この状態で価格表を書き換えると、二重管理になる。 案を基準値にすると、成立しなかったときに戻す作業が要る。無視すると、成立した日に見積もりが一斉にずれる。基準値は現行の100万ドンで固定し、案は感度分析用の別列で持つのが安全だ。

判断の基準は「法令化されたか」に置く。意見公募は案を出す段階の手続きで、その後に公布と施行日が来る。公布と施行日が確認できるまでは、案を社内の基準にしない。 なお現行の100万ドンは郵便・速達の枠として示されている。ほかの送り方の扱いは、この材料からは確認できていない。

なぜベトナムは枠を残すのか

ベトナム財務省は、低価額品への免税を続けることに支持していないと明言している。それでも完全撤廃ではなく、引き下げを選んだ。同国が京都規約(Kyoto Convention)の締約国で、輸出入税法にも免税の規定が残っているためだ。制度を一度に消せないので、段階的にしか動けない。

税目ごとに閉じる時期がずれる点も見ておきたい。 ベトナムは2025年2月18日施行のDecision 01/2025/QD-TTgで、速達輸入の100万ドン未満に対するVAT(付加価値税)の免除をすでに廃止している。今回の案が通れば、関税の側も閉じる。順番はVATが先、関税が後だ。コスト表も税目ごとに列を分けないと、片方の反映を忘れる。

直送と現地倉庫、損益分岐点はどこで動くか

少額・多頻度の直送で回してきた事業ほど、設計の見直しが要る。 現地倉庫にまとめて入れる方式との損益分岐点は、これまでとは違う位置に動いているはずだ。

  • 1件あたりの暫定定額関税 = 3ユーロ × 荷物のHS6分類数
  • 年間の追加コスト = 1件あたりの額 × 年間の出荷件数
  • 現地倉庫案の1個あたり = ロットの輸入諸費用 ÷ 数量 + 保管・入庫・移動・売れ残り

課金の単位が個数ではなく分類だという点が効く。 同じ分類をまとめれば回数は増えない。分類をまたぐ同梱ほど、1件あたりは重くなる。送料無料のしきい値を上げるほど、固定額も積み上がる。

期限も入れておく。暫定定額関税は2028年7月1日に通常の関税へ移る予定だ。いまの3ユーロは通過点だ。 見積もりは「いま」と「2028年7月以降」の2段で持つ。

着地コストを計算し直す順番

  1. 01仕向国ごとに年間の出荷件数を出すまず物量を確定させる。
  2. 02荷物あたりの分類数を数えるHS6がいくつに分かれるか。
  3. 031件あたりの追加コストを積む暫定定額関税は分類数で決まる。
  4. 04現地倉庫案の固定費を月割りする保管・入庫・移動・売れ残りを含める。
  5. 05同じ期間で2案を並べる比例する費用と固定の費用をそろえる。

誰が、何を、いつ確認するか

担当が分かれていると、この作業は止まりやすい。 4つの役割に分けて、持つ情報を決める。

  • 商品担当は、HS6の候補を1商品につき1つに絞る。候補が複数あると計算が合わない
  • 物流担当は、仕向国ごとの送り方と、通関で誰が輸入者になるかを決める
  • 経理担当は、納税者の登録と、送り状と申告データの付け合わせを回す
  • EC運用担当は、価格表とカートの組み方を持ち、同梱のルールを決める

決めるのは物流担当だが、影響を最も受けるのはEC運用担当だ。 分類をまたぐ同梱をやめれば1件あたりは下がるが、送料無料の設計は変わる。

国ごとの話として追うと、どれも遠い国の話に見える。だが自社の出荷実績に当てはめると、当たる国はたいてい1〜2か国に絞られる。 全部を同時に直す必要はない。

よくある質問

少額免税の枠はいつ閉じた?
EUは2026年7月1日、タイは2026年1月1日に廃止済みです。ベトナムは10万ドンへの引き下げ案が意見公募中で、まだ成立していません。

EUの関税はいくらかかる?
HS6の品目ごとに3ユーロの暫定定額関税です。2028年7月1日には通常の関税へ移る予定です。

直送と現地倉庫、どっちが安い?
着地コストを同じ物量・同じ期間で並べて比べます。課税は個数ではなくHS6の分類数で決まる点に注意してください。

まとめ:今週やること

今週やること

  1. 01仕向国ごとの出荷件数を1年分そろえる実績の集計から始める。
  2. 02施行済みの国から着地コストを計算し直すEUとタイが起点になる。
  3. 03HS6の候補を1商品につき1つに絞る分類がぶれると計算が合わない。
  4. 04ベトナムは現行と案を別の列で持つ基準値は現行の100万ドンに置く。
  5. 05分類をまたぐ同梱のルールを見直す固定額と送料無料の綱引きを確認する。

※数字の出典:https://vietnamnews.vn/economy/1799240/ministry-proposes-lowering-tax-exemption-threshold-to-vnd100-000-for-imports-amid-e-commerce-boom.html

株式会社unipeace

越境ECとAmazon広告運用に特化したコンサルティングパートナー。記事は一次情報をもとに、実務で使える形にまとめています。

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