2026年9月13日

米国の原産地審査は「1件の申告」から「経営そのもの」を見る方向へ

越境EC

2026年8月13日、ホワイトハウスが第三国経由での関税回避に関する報告を公表しました。越境ECの物流ルートを組んでいる事業者にとっては無視できない動きですが、公表された数字の扱いには注意が必要です。

まず数字の信頼区間を見る

342億〜3030億ドル年間の関税回避規模の推計幅
750億ドル報告が採用した中間シナリオ
190億〜260億ドルそれに基づく年間の関税減収
最小値と最大値の差は約9倍あります。逐一の監査結果ではなく、あくまで推計と説明の枠組みです。

確度が高いのは政策の方向性

金額の精度より確かなのは、米国が第三国経由の取引を個別の税関案件から継続的な監視対象へ格上げしていることです。CBPはAIを使って異常な貿易フロー、輸入者、原産地のパターンを検出しようとしており、輸出の急増、生産能力と出荷量の不一致、複数の主体が同じ住所や通関構成を繰り返し使う状況などがリスクの手がかりとして扱われます。

「転送」と「原産地の偽装」は別物

ここを混同すると必要以上に怯えることになります。シンガポールでの積み替え、マレーシアでの一時保管、メキシコの倉庫からの配分は、それ自体が違法になるわけではありません。ただしルートを変えただけで原産地が変わることも通常ありません

第三国に工場を建て、人を雇い、材料を調達し、中核的な製造工程を実際に行っているなら、それは本物のサプライチェーン再編です。問題になるのは、生産の実態が伴わないのに書類上だけ原産地を付け替える行為です。

メーカーとして備えるべきこと

出荷前に答えられるようにしておく3つ

  1. 01高リスクSKUの原産地判断出荷前の時点で、そのSKUの原産地をどう判断したのか根拠を持っておきます。品目が違えば適用される規則も違うため、他の製品ラインの結論を流用できません。
  2. 02任意の1件から遡れる状態抜き取られた申告1件から、原材料・工程・工場・支払いまで復元できるようにしておきます。物流ルートは一晩で変えられますが、実際の生産能力は変えられません。
  3. 03止める権限の所在過去の問題が見つかったとき、誰が出荷を止められるのか、誰が記録を保全するのか、米国当局へ訂正や開示を行うかを誰が決めるのかを、事前に決めておきます。

審査の対象は製品・生産・取引・責任者・取引ネットワークへと多層化しています。とくに Importer of Record を誰が実質的に支配しているかは審査対象に入り得ます。「DDPで業者が全部やってくれる」は、リスクを引き受けてもらったことを意味しません。

海外生産・海外出荷の体制づくりについてはメーカー事業のページもあわせてご覧ください。

参考:雨果跨境「白宫报告聚焦第三国转口规避关税」(2026年8月18日)/報告書全文の一次情報は未確認です。

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