規制・コンプライアンス
EUの税関改革では、金額の話より責任の所在が変わったことのほうが実務への影響が大きいかもしれません。従来は最終的にEUの消費者が輸入者として扱われる構造でしたが、新ルールではプラットフォームおよび遠隔販売者が「みなし輸入者」となり、通関手続きと関税・VATの納付責任を負います。
なぜこれが効くのか
プラットフォームが責任主体になるということは、プラットフォームが自らを守るために出品者へ要求を増やすということです。実際の運用では、商品分類(HSコード)の正確性、製品の安全適合、原産地の申告といった情報の提出を求められる場面が増えると考えるのが自然です。
販売者側で起きうる変化
- 01HSコードの精度を問われる課金がHS6単位になったため、分類の誤りがそのまま金額の誤りになります。プラットフォーム側も放置できません。
- 02製品適合の証跡を求められる安全基準を満たさない低価額商品の流入を止めるのが改正の狙いです。CE等の適合証跡の提出要求は増える方向です。
- 03価格表示の前提が変わる関税とVATが購入時点で精算される設計になるため、着地価格の見せ方を設計し直す必要があります。
- 04登録加盟国での納付が前提になるプラットフォームは登録した加盟国へ納付します。どの国で登録しているかによって手続きが変わります。
税関側の評価方法も変わる
あわせて、申告された取引価格に疑義がある場合に税関が別の評価方法を適用できる柔軟性が与えられました。EUの分析では、低価額小包の最大65%が関税回避のために過少申告されていたとされています。「安く申告して通す」という運用は、制度上も実務上も成立しにくくなります。
制度全体の位置づけ
2026年3月26日、理事会と欧州議会は1968年以来最大とされる税関法の改正で政治合意に達し、EU Customs Data Hub の創設と Trust and Check Trader という新しい事業者区分が設けられました。9月初旬に理事会が正式に承認しています。今回の定額関税や取扱手数料は、この大きな枠組みの入口にあたります。