2026年7月、EUの少額免税(de minimis)が終わった。 これまでは少額の荷物に関税がかからず、日本から小口で送るだけで欧州の買い手に届けられた。その前提はもう使えない。越境ECは「送れば売れる」段階を終え、着地コストを先に計算する事業になった。
しかもコストだけ見ても足りない。広告費も運賃も国内より高く、商品画像の品質では海外セラーが上を行く。 決めることは5つ、その前に知っておくべき現実が2つある。
結論
- 2026年7月にEUの少額免税が終わり、小口の荷物にも関税がかかる前提で価格を決める。
- 着地コストは仕入・輸送・関税・VAT・手数料・広告費を1個あたりで出し、売価より先に決める。
- 1市場・1カテゴリに絞って3ヶ月検証し、その手応えを見てから次の市場やカテゴリへ広げる。
まずやること
- 売りたいカテゴリの認証と表示義務を調べる
- 着地コスト(仕入+輸送+関税+VAT+手数料+広告費)を1個あたりで計算する
- 競合上位10件の商品画像と広告量を見る
- 現地FBAか直送かを決める
- 1市場・1カテゴリ・3ヶ月の検証計画を書く
1. 法規制・認証・表示義務
国とカテゴリで、必要な認証と表示は変わる。化粧品・食品・電気用品・子ども向けは特に厳しく、日本で売れていても現地の基準を満たさなければ出品できない。
確認するのは認証の種類、ラベルの記載言語、現地の責任者の要否の3点だ。
2. 関税とVAT
EUでは2026年7月に少額免税が終わり、小口の荷物にも関税がかかる。 これまで「関税ゼロ」で計算していた商品は、売価を上げるか利益を削るかの二択になる。
VATの扱いは地域で違う。EU域内で1荷物150ユーロ以下なら、IOSS(輸入ワンストップ)で買い手からVATを徴収して申告できる。150ユーロを超えるとIOSSは使えず、輸入時課税に切り替わる。 英国は別制度で、135ポンド以下は売り手側のVAT登録が前提になる。
| 地域 | 課税の起点 | 登録の要否 | 実務の要点 |
|---|---|---|---|
| EU | 全荷物に関税 | IOSSは150ユーロ以下 | 超過分は輸入時課税 |
| 英国 | 135ポンド以下は売り手側 | VAT登録が必要 | 価格にVATを含める |
| 米国 | 輸入者の要件が変更 | IORの確認が必要 | 直送の前提が崩れている |
米国は関税ではなく輸入者(IOR)の要件が変わっている。詳細は米国の通関ルールの記事で整理している。
3. 物流と在庫の設計
現地FBAに在庫を置くか、日本から都度送るかで、配送日数とコスト構造が変わる。FBAは配送が速くBuy Boxを取りやすいが、在庫を現地に積むリスクを負う。 直送は在庫を持たないが配送日数で不利になり、関税の実務も荷ごとに発生する。
運賃は思っているより高い。 航空貨物は需要期に跳ね上がり、2026年10月時点では米国向けが欧州向けより61%高い。重量のある商品は運賃だけで粗利が消える。 詳しくは航空運賃の米欧格差で整理している。
4. 着金までの経路
現地通貨の売上をどの経路で日本円にするかを決める。為替手数料と着金日数は資金繰りに直接効く。 見落としやすいのはVATの支払いタイミングで、売上に含まれるVATは預かり金だ。着金額を売上として扱うと納税時に資金が足りなくなる。
5. 言語対応とカスタマーサポート
購入後の問い合わせと返品対応を現地言語で回せるかが評価に直結する。対応が遅れるとレビューが下がり、広告の効率も落ちる。よくある問い合わせ5つ(サイズ・互換性・配送遅延・返品方法・保証)の定型文を先に用意すれば大半は回る。
見落としやすい現実1:広告費は国内より高い
新規出品は、広告を出さないと見つけてもらえない。 検索結果の上位は広告枠と評価の高い既存商品で埋まっている。
しかもCPCもACOSも国内より高く出やすい。 競合が広告費を惜しまないカテゴリでは、同じ売価でも広告の取り分が増える。広告費を着地コストに入れないと、採算は必ず後で狂う。 許容ACOSはACOSとTACOSの記事で整理している。
見落としやすい現実2:商品画像では負けている
海外セラーの商品画像は品質が高い。 3Dレンダー、生活シーンの合成、インフォグラフィック、A+コンテンツを標準で用意している。日本企業は物撮り1枚と白背景で出すことが多く、クリック率と転換率の両方で不利になる。
投資するなら、メイン画像1枚・使用シーン3枚・比較表1枚の5枚構成を最低線にしたい。投資しないなら、レビュー・保証・配送速度で差別化するしかない。「良い商品なら売れる」は越境ECでは通用しない。
着地コストの計算式
売価を決める前に、1個あたりの着地コストを出す。着地コスト = 仕入原価 + 国際輸送 + 関税 + 現地配送/FBA手数料 + 販売手数料 + 広告費。
VATは売価に上乗せされる預かり金なので利益計算からは外すが、価格に含めるか別建てにするかは先に決める。 EU向けで150ユーロを超える商品は輸入時課税になり、着地コストが跳ねる。
よくある質問
Q. 少額免税が終わると何が変わりますか?
EUでは2026年7月から小口の荷物にも関税がかかります。関税ゼロで計算した売価は、上げるか利益を削るかの二択です。
Q. IOSSはどこまで使えますか?
EU域内で1荷物150ユーロ以下なら使えます。150ユーロを超えると輸入時課税に切り替わり、着地コストが跳ねます。
Q. 広告費はどこまで見ればいいですか?
新規出品は広告を出さないと見つけてもらえません。CPCもACOSも国内より高く出るため、広告費まで着地コストに入れます。
物流の選択肢はFBAとは何かとFBA/AWDの置き場所で整理している。
越境ECの基本(何を決めるか)は越境ECとは何かに整理した。
HSコードと関税の確認はHSコードとはを参照。
まとめ:今週やること
越境ECを始める前の確認順
- 011市場・1カテゴリを決める全商品で始めない
- 02認証と表示義務を調べる必要書類とラベル言語まで
- 03着地コストを1個で計算する広告費まで含める
- 04競合の画像と広告量を見る上位10件を並べる
- 05物流の型を決める月10個以上なら現地FBA
越境ECの立ち上げと着地コストの試算は、サービスページで相談できます。
※数字の出典:https://vat-one-stop-shop.ec.europa.eu/