- 対象: 米国Amazonで新規出品・レビュー1,000件未満のASINを運用するセラー/ベンダー(広告アカウントがgood standingで有効なポリシー違反がないこと)
- 開始時期: 2026年10月下旬に米国でオープンベータ開始(発表は9月29日、unBoxed 2026。なおunBoxed関連の公式発表では「2026年11月ローンチ」と表記されている部分もあり、開始時期の詳細はベータコンソールでの確認が確実)。追加マーケットプレイスは今後計画と案内あり、日本の時期は未発表
- 影響範囲: 「レビューを増やす施策」に初めて入札型の広告枠が加わる。無料のレビューリクエストボタンやVineの代替ではなく、第3の選択肢
- 注意: 課金イベント(何に対して支払うか)は公式に未公開。開始前に判断基準を決めておかないと、効果測定できないまま予算だけ消化するリスクがある
何が始まるのか: Review Requestsの仕組み
Amazon Adsは2026年9月29日、新広告商品「Review Requests」を発表しました。最近その商品を購入した認証済み購入者に対して、Amazonのホームページなど高トラフィックページ上で「レビューを書いてください」というプロンプトを表示するタイプのキャンペーンです。購入者はワンタップで星評価を送信でき、テキストレビューや画像・動画の追加は任意です。
キャンペーンはAmazon Ads Agent(またはUnified API)で作成し、既存の広告キャンペーンと同じ入札・予算管理を使います。配信は商品カタログの画像が自動で使われ、クリエイティブの作成は不要。
対象は「合計評価・レビュー数が1,000件未満」の商品に限定され、キャンペーン作成時と配信中に適格性がチェックされ、1,000件に到達すると自動的に一時停止します。そもそもレビューが少ない商品のための道具であり、数千件持つ定番商品の補強には使えません。
売り手側の条件は、広告コンソールアカウントがgood standingで、有効なポリシー違反がないこと。
Amazonが公開しているベータテスト結果は「週あたりの評価・レビュー数が約3倍」(社内データ、クローズドベータ、米国、2026年6月3日〜21日)。ただしこれは Amazon自身のデータで、テスト対象の商品構成・支出額・比較対照群の有無は非公開です。自分の商品で同じ結果が出る保証はなく、「事前の自社ペース」との比較値にすぎません。
一番あいまいなのが「何に課金されるか」
ここが本件で最も情報が整理されていない部分です。
- Pacvueのレポートは「ショップがレビュー提出のクリックをした時のみ課金」と説明
- AdExchangerの報道は「クリック課金モデルで、クリックしてもレビューを残さない買い手に支払う可能性がある」と説明
- Amazon公式ページには課金イベントの記載がなく、最低入札額や料金の目安も未公開
両報道は思ったより近いかもしれません。プロンプトはワンタップで星評価を送信する設計なので、「クリック」と「評価」が同じタップなら実質同じです。ただし星評価だけのレビューは平均点に影響しても、次の買い手が読む情報は増やしません。「評価」と「テキスト付きレビュー」を別々に数えてコストを考える必要があります(報告ダッシュボードもこの2つを分けて計測する設計です)。
デモキャンペーンの初期値は入札$0.75・1日予算$100でしたが、これはデモ画面の初期値であり、実際の入札はASINの競合状況で動きます。「レビュー1件あたりいくらまでなら払うか(実質レビュー単価の上限)」を開始前に自分で決めておくのが、現時点で唯一まともな防御です。
発表のタイミング: FTC訴訟の約1か月後
時系列の事実として整理しておきます。
2026年8月31日、FTCと22州の司法長官は、Amazonの検索広告オークションをめぐる訴訟を連邦地裁に起こしました。Amazonは長年にわたり「セカンドプライスオークション(次点+1セントを支払う)」と説明してきましたが、実際には2019年から隠れたサチャージ(内部文書で”soft reserve price”と呼ばれた)を導入し、Sponsored Products広告では約80%のケースで落札者自身の入札額をそのまま請求。広告主約120万社から累計200億ドル規模を過剰徴収した、というのが訴えの骨子です。Amazonは「FTCの主張はpatently false(明白に虚偽)」と反論しています。
その約4週間後の9月29日、Amazon AdsはunBoxed 2026でReview Requestsを含む一連の広告商品を発表しました。
「なぜこのタイミングなのか」についてAmazonの意図を断定することはできませんし、すべきでもありません。ただ、広告費を支払う側のセラーにとって、広告オークションの透明性が裁判で争われている最中に、新しい課金キャンペーン型が追加されるという状況そのものは、予算配分の判断材料になります。レビューは商品ページに残り続ける資産である一方、課金の条件がまだ非公開の商品を、裁量で試すかどうかは別の判断です。
既存のレビュー施策とどう使い分けるか
「レビューを増やす」手段として、価格と役割が異なる3つが並ぶことになります。
Request a Review(無料ボタン)
- コスト: 無料
- 誰に頼むか: 自商品の購入者(注文ごと1回、配送後5〜30日)
- レビューの表示: 通常レビュー
- 適格条件: 配信期間内の注文
Amazon Vine
- コスト: 親ASINごと。2ユニットまで無料、3〜10ユニットで$75、11〜30ユニットで$200
- 誰に頼むか: 無償提供した「Vine Voices」
- レビューの表示: 「Vine Customer Review of Free Product」のラベル付き
- 適格条件: ブランド登録済み、レビュー30件未満など
Review Requests(新)
- コスト: 広告費(非公開)
- 誰に頼むか: 最近購入した認証済み購入者
- レビューの表示: ラベルなしの通常レビュー
- 適格条件: レビュー1,000件未満、アカウントがgood standing
優先順位の考え方はシンプルです。まだ無料のRequest a Reviewボタンを使っていないなら、まずそこから始めるべきです。同じ購入者に無料で依頼できる枠が残っている状態で課金キャンペーンを走らせるのは、順番が逆です。Vineは発売直後の最初の数件(ラベル付きでも社会証明として機能)に、Review Requestsは販売が始まってからの継続的なレビュー獲得に、という棲み分けです。
消費者の97%がレビューを購入判断の参考にするというBrightLocalの調査をAmazon自身が引用している通り、レビュー数は新商品の初期セールスに大きく寄与します。だからこそ「課金してでも加速したい」需要があり、Amazonが商品化したという構図です。
ベータ開始前にやっておくべきこと
1. 現状の週あたりレビュー数を記録する: ベータ開始前に自社ASINのベースライン(週次の評価獲得数・平均星)を記録しておかないと、「約3倍」が自分の商品で再現されたのかを検証できません
2. 実質レビュー単価の上限を決める: 「追加レビュー1件あたり最大いくらまで払うか」と判定日を、キャンペーン開始前に設定する
3. 商品ページと商品の一致を確認する: サイズ表の誤り・誇大な訴求・古い画像は、レビュー獲得を加速すると低評価も同じだけ加速します
4. ポリシー違反を解消しておく: アカウントに有効な違反があると対象外です
5. 自社側のレビュー誘導は変えない: Review Requestsであっても、同梱カードでの報酬約束(とくに評価と引き換えのもの)はFTCのレビュールール§465.4で禁止され、満足者だけをレビューへ誘導するゲーティングもFTC法5条(欺瞞的行為)違反となり得ます(故意の違反には最大$53,088/件の民事罰 — 2025年のインフレ調整後、2026年も同水準。ルール発効時は$51,744)。いずれもAmazon規約上は従来どおり禁止行為です。Amazonが「聞く機会」を売っているだけで、レビューの内容に関する規制が緩んだわけではありません
Review Requestsは、レビューが少ない商品の立て直しには使える。ただし、いくら払えばレビューが1件付くのかが見えないうちは、本格的に予算を入れるべきではない。
まずは無料の「Request a Review」で足りるか確認する。有料版は、料金の仕組みが公開されてから、1件あたりの上限を決めて試すのが安全だ。
まとめ: やること3つ
1. 無料のRequest a Reviewボタンを全注文で使えているか確認する(ここが先)
2. レビュー1,000件未満の対象ASINについて、開始前の週次レビュー数と平均星を記録し、「追加レビュー1件あたりの支払い上限」を決めておく
3. 課金イベント・最低入札額が公式に公開されたら、デモ初期値($0.75/$100)ではなく自社データで再検討する。日本展開の時期発表にも注意
出典
- Amazon Ads「Accelerate authentic reviews with Review Requests」(2026-09-29) — https://advertising.amazon.com/resources/whats-new/get-product-reviews-faster-with-review-requests
- Amazon Ads「Introducing Branded Conversations and Review Requests」(unBoxed 2026) — https://advertising.amazon.com/library/news/branded-conversations-review-requests
- UNITIX「Amazon Review Requests Ads: How They Work (2026)」 — https://unitix.pro/insights/amazon-ads-review-requests
- Pacvue「Amazon unBoxed 2026 recap」 — https://pacvue.com/blog/amazon-unboxed-2026-what-amazons-push-into-agentic-commerce-means-for-advertisers/
- SentryKit「Amazon Review Requests: What Sellers Are Actually Buying」(2026-10-02) — https://sentrykit.com/blog/amazon-review-requests-ads/ (AdExchangerの報道を含む)
- EcomCrew「Amazon Is Turning Review Requests Into a Paid Ad Product」 — https://www.ecomcrew.com/amazon-is-turning-review-requests-into-a-paid-ad-product/
- FTC「FTC, States Sue Amazon Over Secret Ad Surcharge Scheme」(2026-08-31) — https://www.ftc.gov/news-events/news/press-releases/2026/08/ftc-states-sue-amazon-over-secret-ad-surcharge-scheme
- Regulatory Oversight「FTC and 22 States Challenge Amazon’s Digital Advertising Pricing Practices」 — https://www.regulatoryoversight.com/2026/09/ftc-and-21-states-challenge-amazons-digital-advertising-pricing-practices-in-federal-court/
- Amazon「Amazon FTC Sponsored Ads Lawsuit Response」 — https://www.aboutamazon.com/company-news/amazon-ftc-sponsored-ads-lawsuit-response
- Amazon Seller Central「Vine enrollment fee for sellers」 — https://sellercentral.amazon.com/help/hub/reference/external/G4GZ9J4UZ35VEH6G
- UNITIX「Amazon Vine Cost: $0, $75 or $200 per ASIN」 — https://unitix.pro/insights/amazon-vine
- FTC「The Consumer Reviews and Testimonials Rule: Questions and Answers」 — https://www.ftc.gov/business-guidance/resources/consumer-reviews-testimonials-rule-questions-answers
- FTC Final Rule「Use of Consumer Reviews and Testimonials」(2024) — https://www.ftc.gov/system/files/ftc_gov/pdf/r311003consumerreviewstestimonialsfinalrulefrn.pdf
見送った主張: 「Amazonは星の高いレビューを付けやすい層に広告を表示するのでは」というターゲティング選別の推測(公式情報で確認不可のため不採用)。「広告収入が訴訟で減るから新商品を出した」という意図論(時系列の事実のみを記載し意図は書かない)。Pangram「Amazonトップページレビューの3%がAI生成」という調査(本トピックと直接の接点が薄いため不採用)。