2026年10月2日

米国司法省、輸入申告の不正で2.9億ドルを追及。「通関は業者任せ」が通らない理由

規制・コンプライアンス

米国司法省が2026年10月7日、キッチン・バス用品の輸入業者Uni-Tile & Marble社と同社CEOに対し、約2.9億ドル(関税6,790万ドル+罰則2億2,250万ドル)の支払いを求める民事訴訟を米国国際貿易裁判所に提起した。申立ての内容は、複数のペーパーカンパニーを使った積み替え、過少申告、品目の誤申告だ。

対象は2018年9月から2023年8月までの503件の輸入申告。つまり、5年以上前の申告が2026年に訴えられている。この時間の長さが、日本から米国へ輸出する企業にとっての本題になる。

結論

  1. 米司法省は2026年10月7日、503件の輸入申告をめぐり約2.9億ドルの支払いを求めて提訴した。
  2. 荷ごとに輸入者(IOR)の名義を確認し、自社以外なら止める。直近の高関税輸入1件で書類を突き合わせる。
  3. 通関を通ったことは申告の確定ではない。責任は輸入者に残り、5年以上前の申告が後から請求される。
約2.9億ドル政府が求める関税と罰則の合計
約6800万ドル支払われていない関税
約2.2億ドル不正に対する罰則
503件対象とされた輸入申告(2018年9月〜2023年8月)
米司法省の発表(2026年10月7日)より。合計は約2.9億ドル。

何が起きたか

司法省の発表によると、被告は中国製品を第三国経由で積み替え、実際より低い価格で申告し、品目を誤って分類する手口を503件の輸入申告で繰り返したとされる。対象は木製キャビネット、石英製品、陶磁器タイルなどだ。

項目内容
提訴2026年10月7日(米国国際貿易裁判所)
対象2018年9月〜2023年8月の503件の輸入申告
申立て内容ペーパーカンパニーを使った積み替え・過少申告・品目誤申告
請求額関税6,790万ドル+罰則2億2,250万ドル
経緯2025年12月18日に刑事訴追(関税回避・密輸・資金洗浄)。民事は別手続き

法的な根拠は1930年関税法の19 U.S.C. § 1592(a)(虚偽の申告による関税の支払い回避)。司法省は関税不正に対応するTrade Fraud Task Forceも設置しており、税関(CBP)と連携して執行を強める方針を示している。

なぜ日本のメーカーの話なのか

「通関はフォワーダーやブローカーがやっている」と思っていても、申告の正確性に対する責任は輸入者(Importer of Record)にある。ブローカーは分類し、申告し、CBPとやり取りするが、責任の所在は移らない。

サプライヤーが「関税込み(DDP)で送ります」と言ったり、フォワーダーが「通関はこちらで対応します」と言ったりする場面で、この区別は失われやすい。確認すべきはシンプルだ。輸入者として記録されている法人は誰か。誰のボンドで申告しているか。金額・原産地・品目コードは何で申告されたか。

CBPは輸入者番号の審査も厳しくしている。2026年9月18日から始まったForm 5106の運用変更(無効な輸入者番号の取り扱い)以降、この確認は1年前より重みが増した。

記録は何年も残る。通関を通過したことは、その申告が確定したことを意味しない。入力記録、サプライヤーとのやりとり、支払証拠、調達書類は、年をまたいで表面化する。

確認すべき4つの項目

① 申告価格(Customs value)。 実際の支払いと一致しているか。金型、ロイヤルティ、無償提供品、関連会社間の取引が価格に反映されているか。

② 原産地(Country of origin)。 法的に原産地を決める加工がどこで行われたかを、書類で説明できるか。新しい箱、ラベル、出荷ルートでは、中国製品は他国の製品にならない。

③ 品目分類(HTS code)。 素材・機能・構造・用途と一致するか。難しい分類は、その判断理由を残しているか。

④ 輸入者の同一性。 申告に記載された法人は、適格で、稼働していて、申告内容を認識しているか。

危険信号は決まっている。根拠のない第三国経由、不自然に低い申告額、輸入者を明かさない相手。 低い関税のコードを、製品情報を渡さずにサプライヤーへ選ばせるのも同じ穴だ。1取引に2通の請求書も受け入れない。

今すぐやること

  1. 荷ごとに、輸入者として記録されている法人を確認する。 自社ではない第三者の名前になっていたら、その時点で止める
  2. 直近の関税の高い輸入を1件選び、書類一式を突き合わせる。 商業インボイス・発注書・支払記録・パッキングリスト・船荷証券・申告書(エントリーサマリー)を同じ荷で揃える
  3. 4項目(価格・原産地・分類・輸入者)をブローカーまたは通関に詳しい専門家と確認する。 特に分類と原産地は判断の理由まで残す
  4. 誤りが見つかったら、自己判断で直さない。 事後修正・申立て・事前開示のどれを使うかは、時期と事実関係で決まる。専門家に選ばせる
  5. 出荷前に通関データを承認する担当者を1人決める。 通関後にエントリーパッケージを受け取り、発注・支払記録と照合する流れまで作る

この事件で怖いのは、金額の大きさではない。小さな申告ミスが、何年もたってから大きな請求になるという点だ。

日本企業に多いのは、通関を業者に任せきりにして、申告の中身を知らないパターンだ。自分の荷物が、誰の名前で、いくらで申告されているかを、1件だけでも確認しておくことが、いちばん安い備えになる。

よくある質問

通関を業者に任せていれば責任は免れますか?
免れません。申告の正確性に対する責任は輸入者(Importer of Record)にあり、ブローカーに任せても責任の所在は移りません。

今回の件で請求されている金額と対象期間は?
約2.9億ドル(関税6,790万ドル+罰則2億2,250万ドル)で、対象は2018年9月〜2023年8月の503件です。

輸入者として確認すべき項目は何ですか?
申告価格・原産地・品目分類(HTSコード)・輸入者の同一性の4項目です。分類と原産地は判断理由まで残します。

まとめ:今週やること

今週やること

  1. 01輸入者(IOR)の名義を荷ごとに確認する自社以外の名前になっていたら止めて確認する。
  2. 02高関税の輸入を1件、書類一式で再現するインボイス・支払い・申告書が同じ荷で揃うか。
  3. 034項目を専門家と確認する価格・原産地・分類・輸入者。判断理由まで残す。
  4. 04出荷前の承認フローを作る通関データを承認する担当者を1人決める。

※数字の出典:https://www.justice.gov/opa/pr/united-states-files-civil-suit-recover-customs-duties-and-fraud-penalties-exceeding-280m

株式会社unipeace

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